2020年から小中学校でのプログラミング教育が必修化されますが、内容についてはよく分からないという方もいらっしゃるのではないでしょうか?
今回は文科省が制定した新学習指導要領により、2020年からのプログラミング教育必修化について、よくある勘違いや、プログラミング教育必修化のねらい、今後の課題などについて記事にしました。
プログラミング教育必修化に対して、実際はどのような対応がなされていくのか、子供たちにとってどのような力をはぐくむ効果があるのか、今後のおおまかな国の計画などもふくめてまとめましたので、お子さんがプログラミング教育必修の世代になる親御さんは、ぜひ読んで参考にしてみてくださいね。
プログラミング教育必修化について
2020年度より施行される”新学習指導要領”によって、小学校〜高校の各学校でプログラミング教育が必修化されることが決まっています。
小中学校は「全面実施」となり、小学校は2020年から、中学校は2021年から新たな学習指導要領の教科書で学習をします。
高校は「年次進行で実施」であり、2022年度の高校1年生から新たな教科書での学習がはじまります。
すなわち、2018年時点で小学6年生以下の生徒はすべてプログラミング教育をうけるようになります。
しかしながら、2020年からプログラミング教育が必修化されることについての認知度はいまだ低く、ITビジネスの大手”GMO“が行ったアンケートでは小学校の保護者の約半数が「プログラミング必修化になることを知らなかった」と回答しています。
ボクの兄に小学生の子供がいるのですが、奥さんに聞いてみたら「必修化?そうなの?しらなかった。」といっていましたね。
大学入試にも採用されるかも
大学入試のセンター試験にかわって導入される「大学入学共通テスト」では、プログラミングなどの情報科目の出題が検討されています。
希望の大学に入学できるかどうかにプログラミングの知識・能力がかかわってくるとすれば、無視できないと考える方も多いと思います。
自らの適性にあった力を伸ばすことが一番ですが、プログラミングにふれることでのばせる力も確実にあります。
いずれにしろ、今後の市場で重要視されるスキルになっていくことは間違いないでしょうね。
プログラミング教育必修化の誤解
2020年からプログラミング教育が必修になるにあたって、勘違いされていることがよくあります。
プログラミング教育必修化の誤解あるあるについて見ていきましょう。
“プログラミング”という新教科ができるわけではない
必修化によって”プログラミング“という教科ができると思っている方がいるようですが、そうではありません。
算数や理科、総合的な学習の時間など、すでにある教科の中で実践されます。
具体的にどの教科でどの程度の単元をプログラミング教育にあてるのかは、各学校が判断する仕組みとなっています。
プログラミング言語の使い方を覚えるわけではない
「プログラミング」と聞くと、C、Java Script、PHP、Pythonなどのプログラミング言語を使ってコードを打ち込んでいくのかと思ってしまう保護者の方もいると思いますが、そうではありません。
プログラミングの必修化の目的はプログラマーの要請ではなく、「プログラミング的思考」と呼ばれる、物事の手順を踏み問題を解決するための考え方をそだてることなんです。
毎回タブレットやパソコンを使って授業するわけではない
小学校でのプログラミング教育では、パソコンやタブレットなどのICT機器を使った授業も想定されてはいますが、ICT機器を使わなくてもプログラミング的思考の育成はできます。
「アンプラグド」と呼ばれる専用ツールが出ていたり、紙とペンを使ってプログラミング的思考を身につけるワークもあります。
先進的な小学校ではすでに小学校1年生の算数の授業にも、プログラミングの考え方の1つ「パターン(同じことのセット)」や「ループ(繰り返し)」を使って単元の理解を深める取り組みもおこなわれているようです。
どのようなカリキュラム・授業内容になるか
基本的には既存の授業の枠にプログラミングが取りいれられるようになります。
文科省から出された「平成30年小学校プログラミング教育の手引き」の中では、算数の授業の中で「正三角形・正六角形などの作図」をプラグラミングでおこなう例があげられています。
他にも
- 理科:電気の性質(照明を効率的に利用するにはどうするか)
- 音楽:音楽づくり(さまざまなリズムを組み合わせて音楽をつくる)
- 総合的な学習の時間:情報についての研究、プレゼンテーション
- 部活動などへの応用
などがあげられています。
各科目で1例程度にとどまっているので、これから科目ごとの内容を増やし、煮つめて、より実践的なカリキュラムを作っていく必要がありそうですね。
現時点では「これが主流」と言えるほどのパターンがないので、2020年からの必修化開始からしばらくは、各学校によってカリキュラムの内容も違う状況になりそうです。
プログラミング教育の狙い
プログラミング教育必修化の背景には今後予想される「IT人材の不足問題」が大きく関係しています。
日本では2020年までに37万人のIT人材が不足すると言われています、今後の国際社会で勝ち抜いていくためには「IT力・ITリテラシー」を高めることが必要不可欠です。
小学校におけるプログラミング教育の狙いには
- プログラミング的思考を育むこと
- プログラムの働きに気づき、情報技術を応用すること、また主体性、社会貢献の態度を育むこと
- 各教科の授業で使用する場合、教科の理解を深めるために役立てる
などがあります。
特に重要なのが「プログラミング的思考を育むこと」で、プログラムそのものではなく、プログラムをつくるときの「物事を論理的に考える力」を身につけることなんです。
「必要な動きを分けて考える」→「動きに対応した命令をする」→「組み合わせる」
この動きを相互的におこない、問題を解決していくプロセスをくりかえすことで、「試行錯誤する力・問題解決能力」を育てることが狙いです。
プログラミング教育必修化における課題
論理的思考力を高める上でとても効果があるプログラミング教育ですが、実施にあたってはまだまだ課題があります。
代表的なものをあげてみます。
教員の多くがプログラミングを理解していない
必修化にともなって、教員の数や指導スキルの不足が問題視されています。
小学校の教員の多くがプログラミングになじみがなく、理解ができていません。
現場の教員の中には「自分が理解をしていないので、より深く勉強をしてのぞまないといけない」と不安の声もあがっているようです。
2020年からは新たに小学3年生から英語授業を取り入れるように指導要領が変わるので、担任の教員がすべてにしっかりと対応できるか戸惑いの声があるのも実態です。
まずは教員の方にプログラミング指導の講義を受けてもらうのが良いのではないでしょうか。
ICT(情報伝達技術)環境が整備されていない
タブレットやPCの整備も準備万端とはいいがたく、無線LANの整備も全国の2割強の学校にとどまっているようです。
●教育用コンピュータ1台当たりの児童生徒数……6.2人/台(目標:3.6人/台)
●超高速インターネット接続率(30Mbps以上)…… 84.2%(目標:100%)
超高速インターネット接続率(100Mbps以上)…… 38 .4%(目標:100%)
●普通教室の校内LAN整備率……87.7%(目標:100%)
普通教室の無線LAN整備率……26.1%(目標:100%)
●普通教室の電子黒板整備率……21.9%(目標:100%/1学級当たり1台)*文科省の調査により
紙とペンでも「プログラミング的思考」の育成はできますが、ICT機器がなければ「IT人材」の育成は遠回りになってしまいます。
2020年の必修化までに各学校の整備がもう少しすすんでほしいところですね。
総務省が自主学習にかかるガイドラインを制定予定
総務省がプログラミングの自主学習にかかるガイドラインを2019年中に制定予定としています。
生徒が放課後にも自主的にプログラミングを学べる環境を用意し、習得した技術を実践する場所をつくることで、学校での学習の保管をになう目的があります。
生徒がプログラミングを実践的に学ぶには、指導する人材や学習環境の確保のほか、必要な活動資金の捻出が課題となるため、ガイドラインには自治体や民間企業、金融機関などに求める支援などを定めて、学校や自治体への手引きにするようです。
総務省は、2018年に実施した「プログラミング教育と地場産業の後継者育成」、「商店街の活性化」などを結び付けた19の実証事業の成果や課題などを分析し、ガイドラインを作成する見通しです。
まとめ
2020年にプログラミング教育が必修化されるにあたって、知らないことは事前に調べておきましょう。
必修化の狙いは「プログラミング的思考の育成」であり、直接的にプログラマーをつくるための政策ではないことがわかりましたね。
プログラミングを行い、試行錯誤してプログラムを書いたり、順序立てて物事を考えることで「問題解決能力・論理的思考力」が育ちます。
子供たち自身が、日本が、世界が、豊かな生活、豊かな考え方ができるような教育をみんなで作っていきたいと思います。
この機会に、お子さんと一緒に楽しみながらプログラミングに触れてみるのもオススメですよ。
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